2025
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緑風会会員インタビュー
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卒業生紹介 2025.11.26
農業のデジタル化、ロボット化で中山間地域の
デジタル田園都市化を目指す
株式会社 ラポーザ社長 荒井克人さん (2001年度卒)
長野県でドローンを使った測量や、大規模開発に伴う野生動植物調査を行う会社を経営している不動産学部の卒業生・荒井克人さん。さらにスマート農業を実現するための農業ロボットの開発や、ホップの栽培からビール生産まで行う事業に携わっている。「中山間地域」の活用を目指す荒井さんに話を聞いた。
ドローン調査からロボット開発も
「これからのスマートシティの主役は中山間地域です」と荒井さん。中山間地域とは山間地やその周りの地域のことで、農業をするのに不利な地域とされている。日本ではこの中山間地域で多くの人が暮らしており、荒井さんが生まれ育った長野もその1つだ。
明海大学卒業後、地元に戻って働いていた測量会社を 20 代で退職後、父の造園会社を引き継いだ荒井さんはドローンを使った測量を始める。理由は、山間部では現地測量に時間がかかるため。また、土地の大規模開発に環境保全のための野生動植物調査が必要で、ドローンを使って調査を行うようになったという。
「ドローンで撮影した映像は二次元データですが、複数枚撮影したデータから解析を行い、三次元データを構築することが可能です。これにより、災害時に詳細な被害状況を把握することができ、今後の開発にも役立てることができます」
またドローンで撮影したものと、 GPS を使った実地調査とあわせて、詳細な測量を可能にした。複数地点で GPS データをとり、点と点を結んでドローン画像と合わせて測量。このときのデータを取るための機器は荒井さんのアイデアで手作りしたものだ。「既存の機器を組み合わせて、身近な材料を使って作りました」。他の会社ではできない自動化や高度な技術で独自のビジネスを創出している。
さらに、傾斜のある中山間地域での農業の負担を軽減するために、遠隔操作で農薬を散布するロボットも制作した。傾斜地で収穫物を運ぶ車も開発するなど、農作業ロボットの開発にも意欲的。「自動収穫が進めば、夜間でも収穫作業ができるようになり、とれたてを購買地へ送ることで付加価値の高い農業も展開できます」
少子化、過疎化で農業の担い手が減少していく中で、荒井さんが作成した草刈りロボットは人件費の圧縮や、人員不足の解消に役立つはず。今検証を進めているところだ。
デジタル田園都市の実現に向けて
もともと、荒井さんが明海大学不動産学部へ編入(入学)した理由は、ケンブリッジ大学での研修に行きたかったから。「イギリスの田園都市を実際に見てみたかったんです」
実際に研修で訪れた田園都市レッチワースの美しさには今でも影響を受けているという。「大都市ロンドンは都市問題を抱え、農村部は人口流出が進む中で、都市の便利さと自然豊かな農村の両方の良さを兼ね備えた田園都市の考え方は、今の日本の課題を解決する方法の1つだと思います。田園都市を作る場所は日本では中山間地域であり、魅力ある中山間地域を作ることが重要です」
現在、ビール作りにも取り組んでいると話す荒井さん。「ビールの生産過程で出る麦芽のカスを堆肥にしています。減農薬で農業をすることで、家の周りにフクロウが来るようになったんですよ」。また、野生動植物の調査も行っており、「ネイチャーポジティブ(自然再興)は得意分野」と笑顔で話してくれた。
高齢化する農家の知識をデジタル化して、経験がなくても農業ができるようにしたり、農作業をロボット化したりすることで人の資源が少なくても中山間地域で農業ができるように。農業のデジタル化、仕事のオンライン化などの条件が合えば、日本でも田園都市が成立するようになるだろう。「私が目指すのは中山間地域のデジタル田園都市化。ドローンはその実現のために必要なツールであって、最終目的ではありません。長野だけでなく各地にデジタル田園都市ができれば、日本の形は変わるかもしれない」と終始明るく未来を語ってくれた。
